ミニ四駆では、モーターの慣らしが必要です。
買ったばかりのモーターでは、モーターの性能を100%発揮することが出来ません。
ミニ四駆の速さを決める大部分を、モーターが占めているといっても過言ではありません。
そのため、モーターについての知識をしっかり持つことが、速いミニ四駆を作るうえで必要不可欠となります。
今回は、モーターの慣らしについて、考察してみます。
モーターの慣らし方は、モーターの種類によって異なりますので、まずは、モーターの種類を見てみましょう。
目次
モーターの種類1~金属ブラシ~
モーター内部のブラシに、金属ブラシが使われているモーターがあります。
金属ブラシが採用されていて、大会での使用率が高いモーターの例をあげると、
- トルクチューン2モーター
- トルクチューン2モーターPRO
- ハイパーダッシュ2モーター
これらのモーターがあげられます。
モーターの種類2~カーボンブラシ~
モーター内部のブラシに、金属ブラシではなく、カーボン製のブラシが使われているモーターがあります。
カーボンブラシは主に、ダッシュ系のモーターに採用されています。
先程、金属ブラシを採用していたハイパーダッシュ2モーターですが、ハイパーダッシュ3モーターからは、カーボンブラシが採用されています。
モーターを慣らす目的
次に、モーターを慣らす目的を考えていきましょう。
モーターの慣らしとして代表的なものは、モーター内部のブラシを削る方法です。
ブラシは、電池から送られてくる電気を、ブラシを通して整流子に送る役割があります。
モーター内部では、整流子はブラシに挟まれています。
ここで、ブラシと整流子の関係性を記号を使って表してみます。
※「ブラシ■」と「整流子○」のイメージ
■○■
上の図では、モーターが新品の状態で、まだブラシが削れていません。
モーターのブラシは、使い込むと削れてきます。
新品のモーターでは、ブラシと整流子が接触する面積が少ししかないため、その分、電気も少ししか通しません。
これを、慣らすことでブラシが削れると、以下のようになります。
※「ブラシ【】」と「整流子○」のイメージ
【○】
こちらの図では、ブラシが整流子を覆うように丸みを帯びています。
慣らすことで、ブラシと整流子の接触面積を増やし、結果として、電気の流れを大きくすることが出来ます。
これが、モーターを慣らす目的です。
ブラシ自体は、モーターを使い込んでいけば自然と削れてきます。
ということは、長くモーターを使っていれば、自ずと速いモーターが出来上がるように思われます。
ではなぜ、モーターを使い込んで育てるのではなく、モーターを慣らす必要があるのでしょうか。
次に、モーターを慣らす理由について考えてみます。
モーターを慣らす理由
モーターを使い込んで育てるのではなく、モーターの慣らしをすることには理由があります。
それは、モーターを使い込むことで、モーターに負荷をかけてしまわないようにするためです。
負荷がかかると、モーターの性能も落ちてきます。
慣らしを行うことで、極力、負荷をかけずに、モーターの性能を引き出せます。
実際、新品のモーターでも、使い込んでいけば回転数も上がり、速いモーターになっていきます。
しかし、モーターを使い込んでいるうちに、どうしてもモーターに負荷を与えてしまう状況が発生します。
その状況とは、モーター自体が熱を帯びてくる状態です。
これが、主にモーターに負荷を与える原因の、「熱ダレ」と言われるものです。
モーターが熱ダレを起こすと、モーター内部の磁石の磁力が弱まってしまいます。
磁力が弱まると、回転数も上がらなくなります。
長くモーターを使えば使うほど、熱ダレのリスクは高まるので、使い込んでモーターを育成することでは、真にモーターの性能を引き出せないことがあります。
そのため、モーターを使い込んで育成するのではなく、慣らすことで一気にモーターの性能を引き出します。
これが、モーターの慣らしを行う理由です。
冒頭に説明しましたが、モーターの種類によって、慣らし方が変わってきます。
モーターに使われているブラシが金属ブラシなのか、カーボンブラシなのかで、慣らし方も変わります。
次に、ブラシの種類による慣らしの違いを見てみましょう。
モーターの慣らし方~金属ブラシ編~
金属ブラシは、カーボンブラシに比べて、耐久性が低いです。
しかし、トルクチューン2などのパワーが低いモーターに搭載されているため、問題はありません。
むしろ、ブラシの耐久性が低いということは、ブラシを一気に削ることが出来るため、慣らしを行うことでモーターの性能を素早く引き出すことが出来ます。
金属ブラシのモーターの慣らし方としては、高電圧をかけてブラシを一気に削るやり方をおすすめします。
通常、ミニ四駆はアルカリ電池で3V、ニッケル水素電池で2.4Vの電圧をかけてモーターを動かしています。
アルカリやニッケル水素では電圧が低いため、ブラシを削るのに時間がかかります。
すると、長時間モーターを回さなかればならないため、先程の「熱ダレ」を起こすリスクが高まります。
そこで、慣らしに9V電池などを使うことで、モーターに高電圧をかけて回転数を上げ、一気にブラシを削ります。
モーターにかかる電圧が上がることは、そのまま、モーターの回転数が上がることに繋がります。
※なお、高電圧を長時間かけ続けることは、モーターにかなりの負荷をかけてしまうので、注意が必要です。
このやり方でモーターを慣らせば、短時間でブラシを削ることが出来、且つ、モーターに負荷をかける時間も少なくて済むので、熱ダレによる性能低下も防げます。
モーターの慣らし方~カーボンブラシ編~
金属ブラシは、耐久性が低いために、高電圧で一気に削る方法が良いと紹介しました。
それに比べ、カーボンブラシは、格段に耐久性がアップしています。
そのため、ダッシュ系などの高回転モーターに採用されています。
こちらは、高電圧をかけても、一気にブラシを削ることが出来ません。
しかし、中々ブラシが削れないからと言って、高電圧をかけ続けることは、モーターが熱を帯びて、熱ダレの原因になるため、避けなければなりません。
そこで、カーボンブラシのモーターを慣らすのに最適な方法として、長時間、低電圧をかけ続け、且つ、モーターを冷やしながら慣らすやり方をおすすめします。
耐久性の高いカーボンブラシは、高電圧をかけ続ければ金属ブラシ同様、削ることが出来ますが、それではモーターが耐えられません。
そのため、時間をかけて、少しずつブラシを削ります。
そこで役に立つのが、ダミー電池です。
ダミー電池とは、見た目は普通の電池と同じですが、それ自体に電池の性能はありません。
単に、電気を通すためのものです。
それを使うことで、本来のミニ四駆の電圧の半分の電圧で、モーターを回すことが出来ます。
長時間、モーターを回すので、電池はニッケル水素電池がおすすめです。
ニッケル水素電池とダミー電池を使えば、電圧は1.2Vになります。
この低電圧でブラシを削っていきます。
やり方も、普通の電池の代わりに1本だけダミー電池を入れれば良いため、シャーシに載せたまま出来るのでとても簡単です。
ただ、低電圧といっても、長時間流し続ければモーターが熱を帯びるのは変わりません。
そこで、モーターに溜まった熱を冷やしつつ、慣らしを行います。
こちらもやり方は簡単で、冷蔵庫の中にモーターを入れておきます。
こうすれば、モーターを冷やしつつ、低電圧で長時間モーターを回すことが出来ます。
モーターの回転方向~正回転or逆回転~
モーターの慣らしは、大きく分けて以上の2つに分けられますが、そのうえで、更にやり方は分けられます。
特に、モーターを正回転で回すのか、逆回転で回すのかという部分が、人により大きく異なる点です。
これについては、賛否両論でやり方は様々ですが、ここでは一例として、自分のやり方を紹介します。
まずは、金属ブラシのモーターです。
- 9Vで逆回転を30秒
- 時間を置いて、9Vで正回転を30秒
- その後は、モーターの回転数の上昇具合を見ながら、9Vで正回転を30秒ずつ
続いて、カーボンブラシのモーターです。
- 1.2Vで正回転を2日弱
金属ブラシのみ、逆回転を行うことには理由があります。
9Vの高電圧で高回転すると、少なからずブラシの削れ方にブレが生じます。
そのため、まずは逆回転でブラシを削っておき、その後に正回転でブラシの削れを整えていくイメージで慣らしています。
それに比べ、カーボンブラシでは、低電圧の低回転でブラシを削っていくため、ブラシの削れ方に大きなブレは生じません。
このことから、金属ブラシのみ、逆回転での慣らしを行なっています。
モーターを正回転で慣らすのか、逆回転で慣らすのかは千差万別なので、色々とやってみて、一番ベストであるやり方を見つけるしかありません。
モーター慣らしの注意点
最後に、モーターを慣らす際の注意点を紹介します。
今は、スマホでモーターの音を拾い、回転数を測るアプリがあります。
どのサイトや動画でも、このアプリを使ってモーターの回転数を測り、モーターを慣らしている人が大多数ですが、このアプリを使用した回転数の計測は、あくまで参考程度に留めるべきです。
なぜなら、モーターの慣らしでは、回転数を上げることに注目しがちではありますが、モーターの慣らしで大切なことは、モーターの回転数を上げることと併せて、モーターのトルクを調べることです。
単に、無負荷の状態でモーターの回転数だけが高くなったとしても、トルクが無いモーターでは、加速や登り坂でのスピードが伸びません。
このトルク抜けの原因は、一概には言えませんが、原因の一つとしてブラシの削れ方に問題があります。
ブラシが整流子に対して綺麗に削れていないと、電気を整流子に伝える際に電流が途切れることがあります。
その少しの途切れがあるために、安定した電気を流すことが出来ないため、モーターのパワーロスに繋がります。
では、どのようにトルクが抜けていないかを測るかと言うと、トルクを測るには、実際に走行しているように、ミニ四駆に負荷をかけてみるしかありません。
ミニ四駆を走らせるコースが近くにある場合は、タイムを計測することで、トルクが抜けていないか分かります。
もし、近くにコースがなく、タイムを計測出来ない場合は、スピードチェッカーを使用してください。
スピードチェッカーでは、タイヤの回転数からミニ四駆の速度を計測しています。
そのため、速度を計測する際にスピードチェッカーに載せるということは、タイヤに負荷がかかっていることになるため、これでトルクの抜けがないかを確かめられます。
まとめ
- 金属ブラシのモーターは、高電圧で一気に慣らす。
- カーボンブラシのモーターは、低電圧でゆっくり慣らす。
- 慣らしたモーターは、コースまたはスピードチェッカーを使用して速度を計測する。
以上、モーターの慣らし方についてと注意点でした。
記事内で触れましたが、ミニ四駆はモーターの性能が、スピードに大きく影響します。
そのモーターの性能を最大限に引き出すことが、速いミニ四駆を作るうえで欠かせません。
しかし、モーターの慣らし方については、一番謎な部分が多いと言えます。
ネット上にはモーターの慣らし方について、色々な情報がありますが、その中から気になったものを、実際にやってみるのが一番です。
初めてなので失敗もしますが、失敗するのを恐れて何もしないより、失敗しながらどこがダメだったかを考え、改善しながら進めていく方法が、一番早く成長します。
失敗を恐れず、速いミニ四駆を目指していきましょう!