今回は、モーター慣らしの本質について考察します。
ミニ四駆のモーターを、慣らして回転数を上げることは皆さんご承知のことだと思います。
モーターの慣らし方については、ミニ四駆の歴史の中で数多くの方法が編み出されてきました。しかし、「これをやれば確実!」といった正解は、残念ながらありません。
正解がないにも関わらず、モーターの回転数はミニ四駆の速度を決めるとても大きな要因となっています。
そのため、速いマシンを作るために、まずはモーターを慣らす必要があります。
しかし、正解がないことで、多くの人が迷っているのが現状です。このページを訪れたあなたも、まさにその疑問を抱いているのではないでしょうか。
モーターの慣らし方については、色々なページで紹介されています。そのため、ここではモーターの慣らし方の手順よりもっと本質的なことについて考察します。
今回は、なぜモーターを慣らすのか、モーター内部で何が起こっているのか、どのような理由により回転数が上がるのか、回転数を上げるにはどうすれば良いか、ということに焦点を当てて解説します。
目次
モーターの基本構造と原理について
まずは、モーター自体の構造を理解しましょう。構造が分からなければ、モーターを慣らすうえで何をすれば良いのかが分かりません。
モーターの構造を理解するうえで、とても簡単かつ明確に紹介されているサイトがあります。それは、ミニ四駆のモーターも作っていた「マブチモーター」のサイトです。
まずは、このサイトでモーターの基本構造と原理を理解してみてください。
マブチモーターのKidsサイト Let’s Motorize!
モーターの基本構造と原理を理解出来たでしょうか。これをベースに、モーター慣らしの本質的な部分に入ります。
モーター慣らしに重要な3つの部分
基本構造から分かるように、モーターの中にはシャフトが通っています。そのシャフトにコアやコイル、コミテーターなどが固定され、その周りにブラシやマグネットが配置されます。
モーターには多くの部品が使われている中で、以下の3つがモーター慣らしに特に重要な部品となります。
- エンドベル
- ブラシ
- 軸受け
まずは、この3つを覚えておいてください。
モーターを慣らす目的
ここで一度、モーターを慣らす目的を整理しておきましょう。
皆さんはなぜ、モーターの慣らしをするのでしょうか。
簡単に言ってしまえば、「今より速いマシンを作る」という理由ではないでしょうか。
しかし、この理由では抽象的すぎます。「モーターを慣らす」という面においては、ゴールが全く見えていない状態です。そのため、もっと深いレベルまで目的を探る必要があります。
この理由をもとに、目的をより探ってみると、「速いマシンを作る」とは、ミニ四駆の「速度を上げる」ということに繋がります。
ここで大切なことは、ミニ四駆の最高速度は、モーターと電池で決まるということを理解してください。
そして、「速度を上げる」には、モーターの回転数または、電池の電圧を上げるしかありません。
ここでは、モーターの慣らしにおける目的を探っているため、答えは「モーターの回転数を上げる」ということになります。
このように、目的を探ってみると、本質的な部分に辿り着くことが出来ます。
速いマシン→速度の向上→モーター回転数の向上
「モーターの回転数を上げる」ということが、モーターの慣らしをする真の目的になります。
この目的をベースに、モーター慣らしに必要なことを考えていきます。
モーターの回転数を上げるために必要な2つのこと
前述のとおり、モーター慣らしで特に重要な部分は以下の3つです。
- エンドベル
- ブラシ
- 軸受け
この3つには、モーターが回転する際に共通することがあります。それは、回転に対して物理的に接触する箇所ということです。
モーターはシャフトを軸に回転します。シャフトはエンドベルと軸受けに、コミテーターはブラシに接触します。
この物理的に接触する部分に、「抵抗」が発生します。
シャフト接点の抵抗を減らす
回転するものにおいて、抵抗が発生するということは、回転を妨げることに繋がります。言い換えると、この抵抗により、モーターの回転数が低下します。
そこで、この抵抗を極力減らすことが、回転の効率を上げ、結果として回転数を上げることに繋がります。
そのための方法として、シャフトの接点部分を削って慣らします。
一例として、高電圧の電源を使用し、接点を一気に削ることで表面を慣らす方法があります。高電圧をかける理由は、シャフトを高速回転させて接点部分を削りやすくするためです。
通常、ニッケル水素電池で2.4V、アルカリ電池で3Vの電圧がかかりますが、それでは回転数が上がらず、接点を削るには至りません。
そこで、9V電池を使用して慣らすと、電圧が高い分、回転数も上がり、その力で接点を削ることが出来ます。
モーター慣らしの方法については過去の記事で触れたので、そちらをご覧ください。
過去記事→モーターの慣らし方と、注意すべき点
そしてもう1つ、モーターの回転数を上げるうえで、障害になる要素があります。それは、モーター内部のマグネットから発生する「磁力」です。
熱ダレによる磁力低下
一概にマグネットの磁力が回転に悪影響を与えているのかというと、それは間違いです。
モーターに、マグネットは無くてはならない必需品です。マグネットがなければ、モーターは回転しません。
しかし、モーターが回転を始めたあと、マグネットの磁力は回転を妨げるようになります。あくまで、回転を始めるときに少しの磁力があれば、その後は磁力が少ないほうが回転数は上がっていきます。
そのため、マグネットの磁力を低下させる方法があります。それは、「熱ダレ」です。
モーターは、熱ダレすると良くないという言葉を聞くと思います。これは、熱ダレが及ぼす影響を考えてのことです。モーターが熱ダレすると、内部のマグネットの磁力が弱まります。
磁力は、モーターが回転するときに必要ですが、モーターを回転させる力である「トルク」に大きく影響します。
磁力とトルクは比例していて、磁力が強いとトルクは上がり、磁力が低ければトルクは下がります。しかし、磁力と回転数は反比例していて、磁力が強いと回転数は下がり、磁力が低いと回転数は上がります。
このことから、あえて熱ダレさせることで磁力を低くし、回転数を上げることも可能です。
しかし、熱ダレさせるとトルクは著しく低下します。そのため、スタート直後の加速、コーナーの立ち上がり、バンクなど、テクニカルかつ立体コースではトルクが重要になる場合もあります。
ミニ四駆が走行中、常にモーターが高回転を維持するようなフラット高速コースにおいては、この方法が有効です。
※熱ダレは、モーターに過度な負荷がかかっていることや、モータ内部のコイルが焼き切れることなど、モーターが壊れる可能性がとても高いです。自己責任でお願いします。
まとめ
- 「モーターの回転数を上げる」ことが、モーター慣らしをする真の目的。
- シャフトが受ける抵抗を極力減らすことが、回転効率を上げ、結果として回転数を上げることに繋がる。
- あえて熱ダレさせることで磁力を低くし、回転数を上げることも可能。
モーターを慣らすことだけでも、なぜ慣らすのか、慣らすためにはどうするれば良いのかという本質の部分を、明確にすることが大切です。
本質を理解していなければ、目的を見失います。そして、目的達成の弊害となる要因や原因が見えてくることはありません。
ミニ四駆における本質を理解して、最短で最高の効果を得られるよう努力しましょう。
過去記事→ミニ四駆における本質を理解する!