ミニ四駆について調べていると、必ず出てくる『MSフレキ』という単語。
本記事では、今や公式大会出場マシンの大半を占めているMSフレキの構造を紐解き、仕組みを徹底的に解説します。
これを読めば、MSフレキがなぜここまで使われているのかを理解できるとともに、その性能の高さに驚くはずです。
では、まいります!
目次
MSフレキとは?
MSフレキとは、MSシャーシをフレキシブル化したマシンのこと。
MSシャーシは、フロントユニット、センターシャーシ、リヤユニットという3分割できるシャーシで構成されています。
元々、各ユニットを別々に構成することで、セッティングに合わせてユニットを選択できるように作られたシャーシです。
MSシャーシの特徴である分割構造は、説明書どおりに組み上げると、それぞれのユニットがしっかりと固定されるようになります。
MSシャーシの特徴である分割構造を活かし、結合部にバネやゴムを仕込むことでシャーシの柔軟性を向上させ、ジャンプの着地の際にマシンが受ける衝撃を緩和させる仕組みが、MSフレキと呼ばれる改造です。
MSフレキの構造
MSフレキは、フロントとリヤのユニットを土台としてバネを仕込み、そのバネの上にセンターシャーシを載せることで、それぞれのユニットが上下に可動できる構造になっています。
走行中のマシンは、コースの僅かな段差やジャンプの着地で衝撃を受けます。
そのとき、一番最初に衝撃を受けるのが、タイヤです。
一般的なシャーシは、着地の衝撃によりマシン全体が跳ね上がります。
走行中のマシンが跳ね上がると、路面にパワーが伝わらないのはもちろん、そのままコースアウトする可能性もあります。
そこで、シャーシを3分割できる構造を活かし、それぞれのユニットが独立して可動できるようにすることで、衝撃を緩和しています。
MSフレキの仕組み
MSフレキの簡単な構造を理解したところで、その仕組みについて解説します。
MSフレキの仕組みは、大きく分けて以下の3つがあります。
- バネによる衝撃緩和
- ゴムによる減衰
- 分割構造によるシャーシのしなり
それぞれ、詳しく解説します。
【MSフレキの仕組み①】バネによる衝撃緩和
1つ目の仕組みは、バネによる衝撃緩和というMSフレキ最大のメリットとも言える仕組みです。
特に、公式大会においてはセクション同士に段差があるため、路面から様々な衝撃を受けています。
舗装されていない路面をマシンが走行していると考えると、分かりやすいのではないかと思います。
デコボコの路面からの衝撃を緩和するのが、シャーシの結合部に仕組んだバネです。
バネは、実車で言うところのサスペンションを構成する一部であるスプリングと同じ役割を担っています。
このバネが、路面から受ける衝撃を緩和し、マシンを安定させることができるのです。
さらに、バネによる構造は、単純に走行中の路面からの衝撃を緩和するだけではない効果を秘めています。
それが、マシンが着地するときの挙動。
着地の際にマシンがコースから衝撃を受けるとき、フロントユニットとリヤユニットという土台にバネを乗せていることで、ユニットの中でも一番重量のあるセンターシャーシだけが沈み込むように可動します。
すると、着地の衝撃を相殺するのはもちろんのこと、センターシャーシの土台となっているフロントユニットとリヤユニットを抑え込む効果があります。
フロントユニットとリヤユニットをセンターシャーシが押さえ込むことで、着地の衝撃を受けたときでも、タイヤが路面から離れないようになります。
その結果、すぐ加速することができるのはもちろん、マシンが衝撃で跳ね上がることを防ぎます。
これが、MSフレキが最も得意とする制振性の仕組みです。
【MSフレキの仕組み②】ゴムによる減衰
2つ目の仕組みは、MSフレキのバネの下に仕込むゴムによる減衰です。
MSフレキには、減衰ゴムと呼ばれるゴムを仕込んでいます。
ユニットの結合部に単にバネを入れただけでも路面の衝撃を吸収してくれますが、バネは衝撃を受けて縮むと、受けた力の分だけ反発して戻ろうとする力が働きます。
すると、バネの反発力によって車体全体を揺らすことになり、制振性が損なわれてしまいます。
そこで、減衰ゴムが効果を発揮します。
減衰ゴムがバネの下にあるおかげで、縮んだバネの伸縮を緩やかに戻すことができるのです。
走行中に受けた衝撃をバネが吸収し、バネから生まれる反発力を減衰ゴムが制御する。
いわゆる、ショックアブソーバーの役割を担っています。
これにより、より高い制振性を実現できるのです。
【MSフレキの仕組み③】分割構造によるシャーシのしなり
3つ目の仕組みは、分割構造によるシャーシのしなりです。
ジャンプで真っ直ぐ飛んでコースの真ん中に着地したときは、バネと減衰ゴムが衝撃を緩和してくれますが、毎回真っ直ぐジャンプするとは限りません。
着地の際に、コース壁に乗り上げてしまうこともあります。
そのときに、シャーシのしなりが効果を発揮します。
単純に、一体化しているシャーシでは、コース壁に乗り上げたときにシャーシが衝撃を直接受けてしまいます。
しかし、MSフレキは、フロントユニットとリヤユニットがバネで結合部されているので、ユニットを捻ることができます。
そのため、コース壁に乗り上げたときはフロントまたはリヤのユニットが捻れることで衝撃を逃し、コースへの復帰率が向上するのです。
真っ直ぐジャンプしてコースの真ん中に着地したときはセンターシャーシが可動し、コース壁に乗り上げたときはフロントまたはリヤのユニットが捻れるように可動する。
分割構造で得られる様々な効果が、MSフレキの制振性を高めていると言えるでしょう。
治具を使ってMSフレキの加工精度を向上させる
MSフレキを作る際は、ルーターやドリルなどの工具が必要になります。
ルーターを使ってシャーシを切断し、土台を掘り下げ、ドリルでバネ受けを加工する必要があるからです。
ただ、ルーターだと手作業で加工することから、どうしても精度が犠牲になり、精度を向上させるにはフライス盤やボール盤を使う必要がありました。
そのため、ハイエンドな工具を持っていないレーサーには、とてもハードルの高い改造でした。
しかし、最近ではMSフレキを作るための治具と言われるツールが多数作られています。
治具とは、加工の際に工作物を固定し、切削の制御、案内をするための装置のこと。
簡単に言うと、ある一つの加工をするためだけに特化した専用のツールです。
この治具を使うことで、シャーシの切断やバネ受けの加工をする際に、治具で決められた部分だけを加工すれば良く、加工が容易になり、精度も向上させることができるのです。
ハイエンド工具を用意することが難しい方や、精度が上がらないという方は、治具を使うことで簡単にMSフレキを作ることができます。
MSフレキに使える治具については、こちらの記事にまとめていますのでご覧ください。
まとめ
ミニ四レーサーの憧れの改造であるMSフレキ。
MSフレキは、レーサーによって構造が違ったりセッティングの方法が違うので、改造という面から言えばとても楽しいものです。
高度な改造が必要でありながらも、ミニ四駆を作る楽しさをより実感できる改造です。
しかし、MSフレキは最初の1台を作るのがとても大変です。
様々な工具を用意したり、加工の際も工夫したり、やるべきことがたくさんあって、挫折してしまいそうなこともあると思います。
しかし、最初の1台さえ作ってしまえば、加工の方法などを理解できるので、2台目以降はより短時間で製作できるようになります。
今やMSフレキの作り方は、YouTubeやブログで調べることが用意になりました。
作り方を見ながら真似して、最初の1台を完成させてみてください。
MSフレキを通じて、更なるミニ四駆の奥深さにハマること間違いなしです。
皆さんも、MSフレキの製作にチャレンジしてみましょう!